1979年にテラークというレコード会社が、音質のよいレコードを発売したというので、興味を持った。
その何枚かのレコードの中に、チャイコフスキーの序曲「1812年」というのがあった。
この曲の特徴は、クラシックフアンならよくご存じだが、大砲の音が入っている。演奏会においては通常大太鼓で代用することが多いと思うが、このレコードには本物のの大砲が使用してあった。
オーケストラのダイナミックレンジだけでも、レコードはカバーしきれないのに、本物の大砲まで使ったのではとても録音しきれるものではないから、こういうときはリミッターを使って大音量部分には制限をかけるのが普通である。
ところが、このレコードはリミッターをかけずそのまま録音したらしい。
レコードの溝は目で見ても「溝があるなあ」程度の認識であるが、なんと、このレコード大砲部分の溝の大きさを目ではっきりとらえることができる。
われこそはと思うオーディオフアンは当然興味を持ち、競うようにして自分の装置で再生したのだが、その記事がオーディオ紙に載っていた。
その記事というのは、音量のことではなく「アンプが壊れた」「スピーカーが壊れた」というものであった。
よせばいいのだが、私も、当然、再生したいという気持ちを抑えられず、挑戦してみた。
結果は、私の装置ではアンプやスピーカーが破壊する以前に、問題の箇所になると針が飛んでしまって再生できないのであった。
貧弱な装置であるが故の悲しさであった。
でも、このみじめな気持ちを抑えられず、オーディオ店に行き、今風に言うなら「いいプレーヤーください」と言ったのだ。
そこで、店員の口から出てきたのがこのP3aであった。
カタログを見ての衝撃は、その豪華な風貌もさることながら、当時の私の月給の5〜6倍ほどの価格であった。
どう金策をして手に入れたかはよく覚えていないが、実際に自宅に設置して、問題のレコードを再生してみた。
なんと、針は飛ばない。何か勝利のような気持ちを味わったが、同時に貧乏になった。

EXCLUSIVE P3a の思い出